近畿大学通信で司書資格を取得した記録

近畿大学の通信課程で図書館司書資格を取得しました(2018年度)

図書館情報資源概論 レポート

<設問>

(1)ネットワーク情報資源とはなにか、(2)公共図書館が提供しているネットワーク情報資源の事例や特徴を述べるとともに、(3)今後の収集の在り方や課題についても述べなさい。

 

<回答>

 ネットワーク情報資源とは、磁器資料やパッケージ型電子資料と同じ「非印刷資料」の一つであり(森、p. 32)、パソコンなど電子機器の普及や、ネットワーク環境の発展等に伴い、急速に広がってきた(森、p.52)。「物理的媒体を伴わない」資料であるネットワーク情報資源は、2008年に図書館法が改正された際にも、他の非印刷資料とは異なり、図書館の収集対象として定義づけられることはなかったが、図書館では一般的に、ネットワーク情報資源についても必要なものはすべて収集されている(森、p.2)

 ネットワーク情報資源には、以下のものが含まれる。

(1)有料・無料データベース

 雑誌記事や、辞書辞典、新聞記事、過去のウェブサイトなどを収集・提供しており、民間企業が提供するものは有料、官公庁が提供するものは無料であることが多い(森、pp.59-62)。

(2)電子ジャーナル

 日本図書館情報学会用語辞典編集委員会によると、「従来は印刷物として出版されていた雑誌、とりわけ学術雑誌と同等の内容を、電子メディアを用いて出版したもの」と定義されている(p.164)。複数の学術論文が雑誌としてのまとまりを保ったまま出版社からデジタルで配信され、全文をインターネット上で閲覧できる(宮沢、p.119)。

(3)電子雑誌・書籍

 商業雑誌や書籍が、電子機器を用いて「ネットワーク上のデジタルデータ」として読めるようになったものである(森、p.65)。EPUB形式などで提供され、Amazon社のKindleや、Apple社のiPadなどの電子機器がよく使われる(森、pp.66-68)。

 このほかにも、音楽などの音声コンテンツ、映像などの動画コンテンツ、有形・無形の文化的資源をデジタル化したデジタルアーカイブも、ネットワーク情報資源に含まれる(森、pp.70-73)。

 

2.公共図書館が提供しているネットワーク情報資源の事例や特徴

 公共図書館では、ネットワーク情報資源は十分に提供されているとは言い難いのが実情である。米国では、2015年にLibrary  Journal社が調査した公共図書館のうち、94%が電子書籍を提供していた一方、日本では、そもそも図書館向けの電子書籍が少ないこともあり、2016年10月時点で、電子書籍を提供しているのは図書館設置自治体の約4%にとどまっている(池内、p.25)。

 一方で、地域資料を収集、デジタル化している公共図書館もある。大阪府豊中市立図書館と箕面市立図書館とが連携する「北摂アーカイブス」などが挙げられる(森、p.84)。

 ほかにも、国立国会図書館の承認を受けた公共図書館では、館内限定ではあるが、「図書館向けデジタル化資料送信サービス」を通じて、絶版等で入手困難な資料をインターネットを通じて閲覧と複写ができるほか、「歴史的音源」や動画資料も提供されている(森、pp.79,  82-83)。

 

3.今後の収集の在り方や課題

 ネットワーク情報資源は、障がい者サービスや非来館型サービスの充実を促進する点でも重要である。

 2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され、公共図書館障がい者に対して「合理的配慮」を行う法的義務が発生した(森、pp.38-39)。従来、図書館では、例えば視覚障がい者向けに点字・録音資料やDAISYと呼ばれる音声・画像・動画などを搭載した録音図書等を提供してきた(森、p.41)。しかし、視覚障がい者が新刊をすぐ読むためには、「誰かに傍らで読んでもらうしかなかった」状況が、電子書籍の普及により、インターネットで「検索・購入・ダウンロードして音声で読み上げさせるという方法で、自律的に読書ができる」ようになってきたのである(野口、pp.188-189)。ネットワーク情報資源によって、新たな障がい者サービスが可能になるのである。

 また、ネットワーク情報資源を提供することで、より広域の利用者にサービスを提供できるようになる。特に、都道府県図書館は、市立図書館と比較して奉仕対象面積や人口が遥かに大きいため、ネットワーク情報資源の活用によって、全地域に非来館型の直接サービスを提供できるようになるという点で非常に効果的である(池内、p.28)。

 ネットワーク情報資源の提供には、法や普及状況の面での課題も多い。米国では、著作権法の中に「フェアユース規定」と言って、著作者の承諾がなくとも、一定の条件のもと、公正な利用として著作物の利用を認められる規定があるが、日本ではそのような規定がなく(森、p.76)、図書館活動に制限が生じる。また、米国では、電子書籍が登場してから、出版社、ベンダー、図書館が共通の目的意識を持つことで電子書籍市場の発展と安定に至ったが、日本ではまだ3者の共通意識がなく、図書館向けの電子書籍の普及は進んでいない(池内、p.27)。

 このような課題はあるものの、利用者のニーズを満たし、知る権利を保障するため、図書館は、ネットワーク情報資源の収集・提供を、促進していかねばならない。

(2084文字)

 

<参考資料>

池内, 淳. (2017). 「公共図書館における電子書籍サービス」. 『情報の科学と技術』, 67(1), 25-29. 情報科学技術協会. https://doi.org/10.18919/jkg.67.1_25

 

日本図書館情報学会用語辞典編集委員会(編). (2013). 『図書館情報学用語辞典』(第4版). 東京:丸善出版.

 

野口, 武悟., 中和, 正彦., 成松, 一郎., 植村, 八潮. (2015)「電子書籍アクセシビリティに関する実証的研究 (II) : 携帯型汎用端末による視覚障害者の自立的な読書の検討を中心に」. 『人文科学年報』, (45), 187-199. 専修大学人文科学研究所. http://id.nii.ac.jp/1015/00008509/

 

宮沢, 厚雄. (2018). 『検索法キイノート』. 東京:樹村房.

 

森, 美由紀. (2016). 『図書館情報資源概論』. 大阪:近畿大学通信教育部.

 

図書館情報学用語辞典 第4版

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検索法キイノート

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【感想など】

参考資料の『図書館情報学用語辞典』は手元にあると、どの科目でも参照出来て安心です。『検索法キイノート』は答えが載っていないので自習には不向きかもしれませんが、演習系科目でも使いました。

講評は、(2)については「テキスト以外の事例を自分なりに考察しまとめるとよいでしょう」。(3)についても「ネットワーク情報資源の保存問題やコンテンツの拡充について言及するとよいでしょう」と、合格はしたものの、内容は少々不足していたようです。

たったの2000字でレポートを書くのは本当に難しい…