近畿大学通信で司書資格を取得した記録

近畿大学の通信課程で図書館司書資格を取得しました(2018年度)

情報資源組織論 レポート

<設問>

指定したキーワードをすべて使って、各設問の解答を完成させてください。

1.現在、主に公共図書館大学図書館で導入されているふたつの目録作業について、外部書誌データの利活用との関わりから概説してください。結論では、各目録作業の利点や課題を明らかにしてください。

<キーワード:MARC、集中目録作業、共同目録作業、総合目録、書誌ユーティリティ>

2.十進記号法と列挙型分類法、それぞれの長所と短所を中心に、日本十進分類法(NDC)の特徴について論述ください。結論では、長所と短所からの考察、日本十進分類法(NDC)を活用する意義や課題などを明らかにしてください。

<キーワード:総記、十進記号法、列挙型分類法、補助表、NDC>

 

<回答>

 

<はじめに>

  図書館には、利用者がタイトル、著者など様々なアクセスポイントから検索できるよう、資料を一定のルールに沿って整理した「目録」があり、現在は、多くの図書館がコンピュータを用いた目録を活用している。目録の作成には主に、集中目録作業と共同目録作業が導入されている。

   また、図書館の資料は、分類表に基づいて整理・排架されているが、日本では、公共図書館の99%が「日本十進分類法(NDC)」を採用している(田窪、p.117)。NDCの特徴は、列挙型分類法と十進記号法の利点を併せ持つことである。

 

 

1 二つの目録作業について

(1)集中目録作業

ひとつの組織や機関が一括して目録作業を行うことを「集中目録作業」と言い、その際に使用される、目録の情報を一定のフォーマットでコンピュータ処理できるように記録しているデータを「MARC」と呼ぶ(田窪、pp.70-71)。集中目録作業は信頼できる機関の頒布するMARCデータを活用することで、効率的で書誌情報の品質を保つことが可能である一方、図書の刊行とMARCへの収録とに時間的なずれが生じる問題もある(田窪、p.71)。これは、日本ではCIPと呼ばれる出版物に書誌情報が刷り込まれる制度が無く、目録作成作業が遅れることにも起因する(田窪、p.174)。そのため、日本では国立国会図書館が納本図書館としてMARCを提供するが、実際に多くの公共図書館で活用されているのは民間企業が作成したMARCである(田窪、pp.70-71)。

 

(2)共同目録作業

 「共同目録作業」は、複数の参加機関が分担して目録作業を行うことを指し、コピー・カタロギングによって、あらかじめ登録された必要な書誌データを複製することで各図書館が容易に目録を作成することができる(田窪、p.74)。これにより、目録作成の効率化と同時に、複数の図書館の資料を網羅する「総合目録」の作成も可能になる利点がある一方、書誌情報の品質低下や重複が懸念されるため、作業を管理する「書誌ユーティリティ」という組織が必要になる(田窪、pp.75-76)。米国のOCLCや日本の国立情報学研究所等が有名だが、書誌ユーティリティは、目録作成作業だけでなく、生成される総合目録を活用して図書館間相互貸借やレファレンス支援なども実施することができる(二村、p.64)。

 

 

2 日本十進分類法(NDC)について

(1)列挙型分類法

 列挙型分類法とは、「すべての主題が分類項目として分類表中に網羅されている」分類法である(二村、p. 52)。列挙型分類法には、主題に該当する分類項目がなくても分類表から主題を選ばなければならないという難点があるため(田窪、p.112)、あらかじめ用意した特徴を組み合わせて主題を示す「分析合成型分類法」が考案されたが、これは、複雑化した主題を表現することが可能である一方、分類が複雑化し、排架が困難になるという欠点もある(二村、p.52)。

 

(2)十進記号法

十進記号法は、数字を記号として扱い、主題を数字の桁数で表現するのでわかりやすく、単純明快である(田窪、p.121)。しかし、9区分と言う制約があるので、9区分を超える場合は関連性の高いものを同一記号にまとめるなど区分数を減らしたり、逆に9区分に満たない場合は、下位区分の主題を上位に昇格させたりする工夫が必要になるが、後者の場合は、十進記号法の階層表現力を崩してしまうことにもなる(田窪、p.122)。

 

(3)日本十進分類法(NDC)

 日本十進分類法(NDC)は、米国の「デューイ十進分類法(DDC)」を基に、カッターの「展開分類法(EC)」に倣って主要な学術・研究領域を設定したもの(二村、pp.117-118)で、「十進分類法」の明快さと、「列挙型分類法」の主題の表現の的確さとを併せ持っている。

 NDCでは、「要約表」と呼ばれる「第一区分」(類)、「第二区分」(綱)、「第三区分」(要)と、実際に分類作業に使用する、更に細分化した第四区分以降の「細目表」と言われるものがある(田窪、p.119)。

 それでも表現しきれない資料の分類には、記号を合成してより適切な分類記号を作り出すための「補助表」が使われ、形式や地理、海洋、言語を表す「一般区分表」と、宗教派閥などを表す「固有補助表」がある(田窪、pp.126-128)。

 

 

<おわりに>

 2014年に『日本十進分類法』新版10版が刊行されたが、それは開架書架が主流である現在において「分類作業が行いやすく、また利用者にもわかりやすい分類表をめざ」しての改訂であった(高橋、p.11)。また近年、他国では、書誌コントロールの向上を目的として、図書館目録をLD(Linked  Datta)化する動きも盛んである(中井、p.211)。

 近年、図書館資料は形態の多様化、主題の複雑化などから、分類が難しくなっている。集中・共同目録作業によって効率化を図りながら、NDCによって的確な分類作業を図り、LD等で目録をさらに進化させることで、作業者にも利用者にも利便性の高い目録作成が可能になるだろう。

 (2099字)

 

 <参考資料>

髙橋, 良平. (2015).「『日本十進分類法』新訂10版の概要」. 『カレントアウェアネス』,(324), CA1850, p. 11-14. 東京:日本図書館協会. http://doi.org/10.11501

 

田窪 直規(Ed.), 岸田 和明, 時実 象一, 渡邊, 隆弘, 小林 康隆, 山﨑 久道. (2016). 『改訂 情報資源組織論 (現代図書館情報学シリーズ9)』. 東京:樹村房.

 

中井 万知子, 藤倉 恵一, 橋詰 秋子, 福山 樹里, 神崎 正英. (2016). 「日本十進分類法のLinked Data化:セマンティックWebへの対応を目指して」.『情報管理』,  59(4), 209-217. 東京:国立研究開発法人 科学技術振興機構. https://doi.org/10.1241/johokanri.59.209

 

二村 健(監修), 榎本 裕希子, 名城 邦孝, 石井 大輔. (2012). 『情報資源組織論 (ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望)』. 東京:学文社.

改訂 情報資源組織論 (現代図書館情報学シリーズ9)

改訂 情報資源組織論 (現代図書館情報学シリーズ9)

 

 

情報資源組織論 (ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望)

情報資源組織論 (ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望)

 

 

【感想など】

1回目は不合格、再提出で合格になりました。

非常に詳しく講評を書いてくださる先生で、「設問1では集中目録作業、共同目録作業それぞれを行うことによる利点や課題、設問2では十進記号法の長所と短所について、結論部分としてもう少し掘り下げた考察があれば、より良いレポートになったと思います」とのこと。

テキストを読んでなんとなくわかったつもりでレポートを書いてテストも受けて合格してしまいましたが、その後に情報資源組織演習を受けたら理解度が段違いに上がりました!なので、まずはレポートを提出するだけして、演習を受けてからこちらのテストにのぞむと学習しやすかっただろうなーと思っています。