図書・図書館史 レポート
<設問>
日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代、中世、近世、近代以降)の図書館発展の特徴をコンパクトに要約し、かつ私見(400字程度)を述べてください。
<回答>
図書館の発展は、出版の歴史や、時代の権力者や社会の要請を反映してきた。ここでは、西洋のそれぞれの時代の図書館発展の特徴を記す。
1.古代
王権と宗教とが強く結びついていた古代には、行政的な文書と神話的な文書が一緒に収集された文書館兼図書館があった(小黒、p.61)。
紀元前7世紀頃にアッシリア王がニネヴェに建設した図書館は、楔形文字で書かれた粘土版を収集し、主題別に分類していた(安藤、pp.60-61)。
紀元前3世紀には、プトレマイオス1世がパピルスを収集するアレクサンドリア図書館を創設し、総合目録「ピナケス」も作られた(安藤、pp.62-63)。
同時代には、活版印刷術と紙の出現まで一般的に使われていた羊皮紙を使ったペルガモンの図書館もあった(安藤、p.65)。
古代ギリシアの図書館の蔵書は戦争によってローマに持ち去られ、一般市民に公開され公共図書館となったが、貴族も奴隷も一緒に無料で利用できたという点で現代の図書館に似ていたと言われている(安藤、pp.65-69)。
2.中世
中世の文明はキリスト教の発展と密接に結びついており、図書館は修道院や教会と共にあった。修道院図書館では、写字生がキリスト関連書やギシリア・ローマの文書を書き写して蔵書として収集していた(安藤、p.70)。ヨーロッパ各地の修道院に図書館が設立され、修道院は文明の収集・保存の要となっていった(安藤、pp.73-75)。
中世後期になると大学が教育機関として台頭し、1257年頃に設立された神学校ソルボンヌ大学の図書館では、資料は宗教・非宗教ではなく、学科・研究主題によって整理された(安藤、pp.76-79)。
この頃の図書は大変貴重だったので、貸し出しには担保が必要だったり、鎖付き本が用いられたりしていた(安藤、p.79)。
3.近世
1450年頃にグーテンベルクが活版印刷術を発明すると、図書が大量かつ安易に生産され、一気に普及したことにより、貸出しや公開が促進され、近代図書館の芽生えにつながった(安藤、pp.83-85)。
1517年の宗教改革は、活版印刷術によってルターの論文が急速に広がったことも要因であった。宗教戦争で破壊された修道院図書館の資料が、権力者などに収集され、公共図書館や大学図書館の蔵書になったことや、布教を目的とした新しい教会図書館が設立されたことにより、図書館の一般利用が促進されるようになった(安藤、pp.85-86)。
また、1545年にはスイスで『世界書誌』が刊行され、後の納本制度を伴う国立図書館の発生へとつながった(小黒、p.71)。
4.近代以降
(1)イギリス
イギリスの図書館は、官主導で発展した。王室図書館の司書が1650年に「司書は図書の番人でなく教育者である」という当時としては画期的な考えを述べたほか(安藤、p.93)、1662年に納本制度が定められ、大英博物館が作られた際には、現在の重要な図書館理念である「知の自由」が、当時の議会で早くもうたわれていた(安藤、pp.94-95)。
それでも他のヨーロッパ諸国に比べてイギリスの図書館の発展は遅々としていたが、1850年に公共図書館法が制定され近代公共図書館がスタートすると、産業革命に伴う経済的発展によって図書館の発展も一気に加速した(藤野、pp.136-139)。
(2)アメリカ
アメリカの図書館は、民主導で発展した。18世紀に政治家・企業家のベンジャミン・フランクリンがフィラデルフィア図書館会社を創設し、会員制図書館が各地に設立された(安藤、pp.106-107)。その後は、機械工や商業など社会図書館と呼ばれる図書館が増え、今日のアメリカの「社会に役立つ公共図書館」という思想の基盤になった(安藤、pp.107-108)。
その後、義務教育の制度化などに伴いボストン公共図書館が1848年に設立されるなど公費を投じた無料図書館ができ始めた(小黒、p.77)。1876年にアメリカ図書館協会が設立されると、公共図書館が急増し、無料図書館が機会均等を保障すると考えた実業家カーネギーが図書館へ巨額の寄付をして発展を加速させた(小黒、pp.78-79)。
5.まとめ
図書館の発展は、社会の発展と密接に結びついている。かつては一部の特権階級向けだった図書館は、今や誰でも無料で使える知的自由の要である公共図書館として発展した。また、粘土板から始まった図書館資料も、現在はデジタル化が急速に進み、物体を伴わない電子資料の提供が不可欠になっている。
図書館では近年、従来の蔵書検索のみならず、電子書籍や雑誌記事など「あらゆるコンテンツを一度に探すことができる」ディスカバリーサービスという検索サービスが登場するなど、提供できる情報が益々多岐に渡っている(原、p.185)。
これまでの図書館は、物理的資料を提供する場としての機能が主であった。しかし、これからの図書館は、従来の資料や役割にとらわれず、あらゆる情報資源を収集・提供できる場として、社会に合わせたより一層柔軟な取り組みが求められるだろう。
(2096文字)
<参考資料>
安藤, 勝. (2012). 『図書・図書館学』. 大阪:近畿大学通信教育部.
小黒, 浩司 (編著). (2013). 『図書・図書館史(JLA図書館情報学テキストシリーズ3)』. 東京:日本図書館協会.
原, 聡子., 片岡, 真. (2014). 「ディスカバリーサービスとこれからの図書館」. 『図書館雑誌』, 108(3), 185-187. 日本図書館協会:東京. http://hdl.handle.net/2324/1440784
藤野, 幸雄. (1999). 『図書館史・総説(図書館情報メディア双書I)』. 東京:勉誠出版.
【感想など】
歴史は苦手なのですが、図書館史は面白かった!選択して良かった科目です。シンプルにテキストに書いてあることをレポートに起こしていけばいいので、最初の方でも書きやすいレポートだと思います。
先生の講評はシンプルですがうっかり誤字の指摘などもあり、細部まで見てくださっているんだなーというのが伝わってきました。