近畿大学通信で司書資格を取得した記録

近畿大学の通信課程で図書館司書資格を取得しました(2018年度)

児童サービス論 レポート

<設問>

近年の子どもの読書離れについて述べ、図書館司書として児童サービス(ヤングアダルトを含む)をどのように取り組んでいけばよいか、また図書館は関係機関等とどのように連携・協力し、児童サービスを進めていけばよいかを述べてください。

 

<回答>

1 近年の子どもの読書離れ

 先進国では読書離れ・活字離れが共通の課題となっており、日本でも戦後の社会環境の変化等から「子どもの育ちそびれ」現象として異変が起こり、言語の獲得や読書の基盤になる生活体験が脅かされている(川上、pp.3-4)。

 読書離れの要因としては、次の4つが複合的に作用している(川上、p.5)。

 ①子供の多忙化や遊びの変化など「個人的な要因」

 ②家庭の読書に対する環境など「家庭の要因」

 ③活字以外のメディアの発達や読書観の変化など「社会的要因」

 ④学校教育の変化や学校図書館の不備など「学校教育の要因」

 そういった状況に対応するため、平成13年度に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が成立し、全国で子どもの読書を振興する取り組みが始まった(文部科学省)。その結果、学校で朝読書の時間が取られるようになったことなどから、最近の子どもの読書量は増加しており、また本を全く読まない不読率も減少傾向にある(二村、pp.71-72)。

 現代の国際化社会において、文字活字で意思疎通を図ることは不可欠であり、また読書は子どもの精神的・肉体的な健やかな成長に重要な役割を果たすため、児童サービスはこれからの社会に欠かせないと言える(川上、pp.3-4)。

 

2 児童・ヤングアダルト(YA)サービスへの取り組み

 児童サービスは、成人向けサービス同様に「誰もが自由に自分の求める知識や情報を手に入れ、読書を楽し」めるよう、子どもの特性を考慮して実施されるサービスで、生涯学習の出発点であることから社会的意義も大きい(堀川、pp.12-13)。

 児童サービスには、直接サービスと間接サービスがある。

 

 ①子どもと直に接する「直接サービス」(川上、pp.16-44)

 カウンタを離れたレファレンスや読書案内等を行う「フロアワーク」、子どもと対面してお話や物語を語る「ストーリーテリング」、テーマを設定して複数の本を口頭で紹介する「ブックトーク」やそれに遊びの要素を多く取り入れた「アニマシオン」、読むことに結びつけた集団活動を提供する「行事、文化・集会活動」などを指す。

 ②条件・環境整備など「間接サービス」(川上、pp.45-53)

 子どもの興味・関心を引きやすいよう工夫した分類・配架、季節などテーマに合わせた資料の別置・展示、子どもや子どもに関わる大人向けに本の情報を新着別等にまとめたブックリスト等の作成、利用案内や資料紹介、行事のお知らせ等お便りを用意する広報活動などを指す。

 

 また、主として13~18歳の青少年向けのYAサービスは、性の芽生えや親離れ、人格形成や思考の発達、社会認識の変化等に伴い、精神的に不安定な年代の「自分探し」を、読書活動等を通じて援助するサービスであることから、社会的意義が大きいと言える(川上、pp.122-126)。YAサービスの例としては、YA担当者の配置、YAコーナーの設置、YA向けプログラムの提供などが挙げられる(川上、pp.132-139)。

 

 

3 関係機関との連携協力

(1)学校との連携

 図書館法第3条で規定されているように、公共図書館にとって学校との連携は不可欠である(川上、p.107)。連携には、資料協力と人的協力がある。学校図書館は、調べ学習が定着してきた昨今でも未だ資料整備が十分とは言えず、公共図書館が代わりに資料をそろえ、学校へ貸し出すことで学習を補助するのが「資料を通しての協力」で、司書と児童・生徒が相互に図書館と学校を訪問して読書案内や利用案内等を行うことで距離感をなくし、子どもの自主的な公共図書館利用を促進するのが「人的協力」である(川上、pp.109-110)。また、図書館員と教員が相互に情報提供・意見交換することが、より効果的な連携を可能にするが(川上、p.110)、これには同時に、子どもに大きな影響力を持つ教員に図書館を身近に感じてもらうことが間接的に子どもへの啓もう活動となるという側面もある(二村、p.67)。

 

(2)その他の機関との連携

 公共図書館は学校以外にも、病院や保健所、私設文庫など地域の関係機関との連携が必要である。その中でも特に今後は、少年院との連携が見込まれる。少年院での読書活動は人格形成や娯楽の提供、表現力向上、自己の客観視など罪を犯した少年たちが社会に適合するために健全な育成を図るのに有意義とされており(脇屋、p. 115)、平成26年度に改正された少年院法で「書籍等の閲覧」に関する条文が追加されたことからも、今後の連携強化が期待されている(日置、p.19)。

 

4 おわりに

 子どもにとって読書は「精神的により充実した一生を送る」ためのスタート地点であり、児童サービスは生涯に渡る図書館利用へと繋がる重要なサービスである(二村、pp.7,  16)。公共図書館は、発達段階や育つ環境に応じてどんな子どもにも等しくサービスを提供できるよう、様々な地域機関と連携し、時代や社会のニーズに合わせたサービスを子どもと子どもに関わる大人へ提供してく必要があり、それが公共図書館の社会的存在意義の向上をも促すだろう。

(2097字)

 

<参考資料>

川上, 博幸., 高橋, 伸子. (2012). 『児童サービス』. 大阪:近畿大学通信教育部.

 

二村, 健. [監修], 望月, 道浩., 平井, 歩実. (2015).『ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望 7 児童サービス論』. 東京:学文社.

 

日置, 将之. (2017). 「少年院における読書活動 -改正少年院法をもとに-」.『明治大学図書館情報学研究会紀要』, 8, 19-25. http://hdl.handle.net/10291/18885

 

堀川, 照代. [編著]. (2014). 『JLA図書館情報学テキストシリーズⅢ6 児童サービス論』. 東京:日本図書館協会.

 

文部科学省. (2009). 「子どもの読書活動推進の取組~子どもの読書活動の推進について~」. 取得日 2018年〇月〇日, http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/dokusyo/suisin/index.htm

 

脇谷, 邦子. (2006). 「少年院と図書館(第47回研究大会グループ研究発表)」. 『図書館界』,  58(2), 114-119. 日本図書館研究会. https://doi.org/10.20628/toshokankai.58.2_114

 

児童サービス論 (ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望)

児童サービス論 (ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望)

 

 

 

児童サービス論 (JLA図書館情報学テキストシリーズ 3-6)

児童サービス論 (JLA図書館情報学テキストシリーズ 3-6)

 

 

 

【感想など】

非常に苦しかったです…というのもテキストと意見が合わないから。例えば「子どもの読書離れ」は特にない、というのが最近の傾向だと思うのですが、このテキストは未だに社会環境の変化や技術の発達が子どもの読書離れを招いた、という論調でとにかく全ての主張が古い。テキストのその辺りを無視して提出した1回目のレポートは不合格でした。

なので2回目は心を無にして、なるべくテキストに沿うようなレポートを書きました…これだとやはり、「設題①はやや読書離れの実態の説明が弱い」そうです…が、これが限界でした。

基本的には学ぶ立場にいる以上あまりテキストなどに物言いをしたくないのですが、この科目はちょっといただけないです。現代版に更新してほしい。