近畿大学通信で司書資格を取得した記録

近畿大学の通信課程で図書館司書資格を取得しました(2018年度)

生涯学習論 科目終末テスト(回答例)Q6~Q10

※設問の後ろのページ数は2018年度版テキストでの回答に使った参考ページです

※テスト課題は添削されていないので不正解の可能性もあります。あくまでも回答例です

※自分の勉強用にまとめただけのものなので誤字脱字あります 

 

<回答例>

Q6.社会教育行政と法制度について述べなさい。⇒p.45

 日本の教育改革が生涯学習体系へ移行し、生涯学習の振興が行政における重要な政策となったのは1984年に臨時教育審議会が設置されて以降だが、それ以前にも、明治初期から社会教育行政の萌芽が見られた。当時は、法整備はなく、必要に応じて個別に訓令・通帳などが発せられ、次第に制度が作られていった。

 社会教育行政が初めて法律に基づいて展開されたのは、戦後で、1946年の憲法制定以降、教育基本法・学校基本法教育委員会法が制定されて学校教育に関する行政制度の整備が整った後、1949年に社会教育法が制定された。

 社会教育法は、社会教育に関する総合法で、社会教育振興のための国や地方公共団体の任務を明らかにしたものであり、すべての国民が自主的な学習ができるような環境を整えることが目的である。社会教育法は社旗教育全般にわたる内容が規定されており、①総則、②社会教育主事及び社会教育主事補、③社会教育関係団体、④社会教育委員、⑤公民館、⑥学校施設の利用、⑦通信教育から成り立ち、今日まで改正を重ねてきた。社会教育法で「社会教育のための機関とする」とされた図書館や博物館については、別途、1950年には図書館法が、1951年には博物館が制定された。

 図書館法は、①総則、②公立図書館、③市立図書館から成り、図書や記録その他の資料を収集・整理・保存して一般の利用に供することで、教養・調査研究・レクリエーション等に資することを目的とする図書館の設置及び運営に関する法である。

 博物館法は、①総則、②登録、③公立博物館、④私立博物館、⑤雑則から成り、様々な資料を収集・保管・展示し、教育的配慮のもとに一般の利用に供することで、教養・調査研究・レクリエーション等に資することを目的とする博物館の設置及び運営に関する法である。

 1990年には、日本初の生涯学習の法である、「生涯学習振興法」が成立し、都道府県の①生涯学習振興のために実施する事業、②「地域生涯学習振興基本構想」の作成、③生涯学習審議会の設置等を規定している。

 さらに、戦後の経済の発展に加え、現在の国際化・情報化等による社会の変化に対応するため、2006年には教育基本法が全面的に改正された。そこで新たに盛り込まれた条項の中には、生涯学習の理念や学校・家庭・地域住民等の連携・協力があり、社会教育についてもこれまでの「個人の要望」のみならず、7「社会の要請」にもこたえる必要があることが盛り込まれ、社会教育の規定の充実が図られた。教育基本法の改正を踏まえ、2008年には、社会教育法、図書館法、博物館法も改正された。

 

 

Q7.教育基本法の改正と生涯学習の振興について論じなさい。⇒p.40

 戦後間もない1946年に憲法が制定されると、1947には、教育基本法・学校教育法が、1948年には教育委員会法が、そして1949年に社会教育法が制定された。

 教育基本法は、2006年12月におよそ60年ぶりに全面改正された。改正では、第2条の教育の目標に「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する」態度、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と強度を愛する」態度を養うことなどが新たに盛り込まれた。ほかには、第三上の「生涯学習の理念」や第10条の「家庭教育」に関する規定が新たに設けられた。第12条の社会教育については、個人の要望だけでなく社会の要請に答える必要があることも盛り込まれた。ほかに新規に盛り込まれたものとしては、第13条の「学校・家庭・地域住民等の相互の連携協力」や、第17条の国や地方公共団体の「教育振興基本計画の策定」がある。こうした点が、一部からは戦前の愛国心教育への回帰への懸念や、国家統制の強化だと危ぶむ声もあがった。

 教育基本法の改正を踏まえて、2007年6月には学校教育法、教員免許法等の学校教育関連法が、2008年6月には社会教育法、図書館法、博物館法の社会教育関連法が改正された。社会教育法の改正では、社会教育行政は生涯学習の振興に努めること、そのために学校・家庭ち・地域住民その他関係者相互間の連携・協力の促進に努めることが、新たに盛り込まれた。もかにも、「放課後子ども教室」や地域人材の活用による「学校支援地域本部」に関する事務が市町村教育委員会の事務に追加され、さらにこういった学校との連携事業を進めるために、社会教育主事の職務に学校への助言を可能にする規定が追加された。

 しかし、この改正にみられるように、文部科学省生涯学習振興施策が学校教育の支援に関するものに重点化されており、社会教育が単なる学校教育のサポートになってしまっているとの批判も上がっている。社会教育行政は、関連法の改正時に導入された新たな視点に配慮しながら、社会教育本来の役割を十分に認識した施策展開が、今は強く求められている。

 

 

Q8.新しい「公共」と生涯学習の振興について述べなさい。⇒p.39、p.41

 2000年に当時の小渕内閣総理大臣のもとに設置された「21世紀日本の構想懇談会」が出した報告書「日本のフロンティアは日本の中にある―自立と協治で築く新世紀」のなかで、21世紀は従来の「官から民へ」という姿勢でなく、自立した個人が社会に参画することで様々な主体と協同して「新しい公」を創出することが必要であるとの新しい考えを示した。

 「新しい公」の考え方は教育分野にも広がり、2002年の中央教育審議会答申「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」において初めて「新たな公共」という表現が用いられた。2003年の中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい教育基本方針と教育振興基本計画について」でも、21世紀の教育が目指すのは「新しい公共を創造し、国家・社会の形成に主体的に参画する日本人」を育成する目標が掲げられた。

 2004年には、中央教育審議会生涯学習分科会の「今後の生涯学習振興方策について」で、これからの生涯学習振興のためには、生涯学習における新しい公共の視点を重視すべきとし、行政依存を転換し、個人や団体が社旗の形成に主体的に参画し、相互に支えあう互恵互助の精神に基づくことが必要と指摘した。

 「新しい公共」は、2006年の教育基本法改正や、それに伴う社会教育関連法や学校教育法の改正にも反映された。

 

 

Q9.戦後の社会教育行政の再出発について述べなさい。⇒p.23

 戦前の社会教育が国民の強化活動や統制指導に利用されたことから、戦後の社会教育行政は、民主主義思想の普及と国民の自主的・自発的な学習を支援することを基本に、GHQ連合国軍総司令部)内のCIE(民間情報教育局)の指導の下、体制が整備されていった。

 1645年9月には、文部省が教育の方向性を示す「新日本建設の教育方針」を発表し、成人教育や家庭教育など社会教育全般の振興を目標に掲げ、10月には、戦争中に廃止されていた社会教育局が復活し、国の社会教育行政機構が一応は整った形になった。また117月には、都道府県レベルでの社会教育の基盤整備を推進する訓令「社会教育の振興に関する件」が発せられた。

 1946年になると、第一次米国教育視察団が、戦後教育の基本的指針を盛り込んだ報告書をGHQに提出し、その中で、日本の民主化を推進するうえでは成人教育が非常に大切で、PTA活動の奨励、学校開放、図書館・博物館の整備等について勧告した。

 1947年には、教育基本法が制定され、国と地方公共団体による社会教育の奨励と、図書館・博物館・公民館等の施設の設置や学校の知施利用によって教育の目的の実現に努めることが規定された。

 1948年7月には教育委員会法が制定され、社会教育の事務は各地方公共団体教育委員会の担当となり、1949年6月には、社会教育法が成立した。その後1950年委図書館法が、1951年には博物館法が公布されたことで、社会教育関係の法整備が整った。

 

 

Q10.学歴社会と生涯学習社会について、比較して論じてください。⇒p.18

 戦後のベビーブーム世代の新制高等学校の進学時期に前後して、受験戦争が激化していき、その後も進学率は年々高くなり、日本は学歴社会と言われるようになっていった。

 学歴社会とは、人生の初期に受けた教育の履歴がその後の人生に決定づける社会である。人間が学歴によって評価され、教育歴が個人の能力にそのまま反映するならば問題ないが、能力の保障と学歴とは必ずしもイコールではないことから問題になる。

 社会教育は、そのような学歴社会が問題視された際に、それを変革するものとしての期待もあった。しかし、生涯学習社会とは、生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が社会において適切に評価される社会ではあるが、教育機会の均等と、教育成果の平等とはイコールではないことに注意するべきで、生涯学習社会が、学歴社会の問題をすべて解決してくれるものではないことを理解する必要がある。

 それでも、生涯学習の内容には社会的課題・公共的課題に関するものもあり、生涯教育活動を通じて学んだ成果は、個人だけでなく、社会にも還元される場合もあることから、行政が社会教育施設の設置や運営、団体への支援などにより、そういった社会的課題に関する学習機会を提供することが重要だと言える。