近畿大学通信で司書資格を取得した記録

近畿大学の通信課程で図書館司書資格を取得しました(2018年度)

図書館制度・経営論 レポート

<設問>

図書館の組織の種類を挙げ、それぞれについて述べるとともに、文科省の「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」を読み、利用者から見て、これからの図書館組織はどうあるべきか、貴方自身の考え方を含め論じて下さい。

 

<回答>

 

1 図書館の組織の種類

 図書館の組織は「図書館の理念に基づく目的を具体的に達成する仕組み」であることから、どのような組織を選択するかによって図書館の在り方そのものが問われる(毛利、p.66)。以下に5つの図書館の組織を挙げるが、どの組織形態を採用しても利用者中心思考を忘れずに各組織形態を柔軟かつ効果的に採用することが必要である。

 

(1)職能別組織(機能別組織)

 知的文化財の収集・組織・保管・提供という図書館の機能面から部門化した組織で、総務部、収書部、整理部、奉仕部など図書資料の流れに沿って分けられる。日本の図書館組織としては最も多く、長所として管理コストの低さ、人材が少なくて済む、管理統制が比較的容易なことが挙げられる一方、専門家が育成しにくい、深い利用者サービスができないなどの短所もある(毛利、p.72)。

 

(2)主題別組織

 資料の形態を問わずに自然科学、人文科学、郷土資料など主題別に部門化し、それぞれの下に収書係、サービス係など職能別組織を作る(毛利、pp.72-73)。

 管理経費が多くかかるという短所がある一方、図書館員が特定の専門主題に関してキャリアを蓄積できるため主題専門家の育成が可能で、利用者側も専門的サービスを受け入れられるという大きな長所があることから、導入の効果が非常に高い。「主題別閲覧制度」と呼ばれる閲覧部門委主題別を一部取り入れた制度を郷土資料室などで採用している公共図書館もあり、どのような規模の図書館においても一定の主題別組織を導入することは利用者にとってメリットが大きい(毛利、pp.73-74)。

 

(3)利用者別組織

利用者の別によって組織化を行うもので、大学図書館ならば、学部学生・大学院・教員図書館がある。閲覧制度に導入した場合には、大学図書館ならば学部学生・大学院・教員閲覧室に、公共図書館ならば成人・児童・障がい者閲覧室等になる(毛利、p.74)。

 

(4)資料別組織

 資料の形態別に組織化を図るもので、雑誌・新聞部門、逐次刊行物部門、参考図書部門、視聴覚資料部門、貴重書・古典籍部門、地方資料部門、言語資料部門、地域研究資料部門、マイクロ資料部門、電子資料部門などに分ける。利用者組織同様に、閲覧制度のみに資料別組織を導入する図書館もある(毛利、p.74)。

 

(5)混合組織

 前述の4つの組織を複合的に組み合わせた組織で、日本の図書館では混合組織を選択している場合が多い。基本的には機能別組織を採用しながらも、閲覧制度には主題別、利用者別または資料別組織を導入する場合や、雑誌・新聞や視聴覚資料などについて独立した係がいて、各係が資料の選定から提供までを一元的に処理する資料別組織を一部導入している場合もある(毛利、p.75)。

 

2 これからの図書館組織

 文部科学書は社会の変化や時代のニーズに対応するため、平成24年12月に『図書館の設置及び運営上の望ましい基準』を改正し、新たに「知識基盤社会において、図書館は地域の情報拠点等として重要な役割を担うこと」が明記された(文部科学省、p.1)。それは、『図書館の設置及び運営上の望ましい基準の見直しについて』において、「地域の知の拠点」として課題解決型図書館が求められたからである(これからの図書館の在り方検討協力者会議、p.1)。

 その目的を実現するためには、これからの図書館では主題別組織の導入が必要だろう。主題別組織が発展している米国では、司書は専門職として専門分野の知識を磨き、高いレベルのサービスを利用者に提供しているが、日本ではコストの高さなどから導入が進んでいない(毛利、pp.73-74)。しかし、特にレファレンスサービスなどでは質問の適切な処理、書誌の適切な提供や指導は専門知識がないと実施できないのである(毛利、p.128)。

 専門知識育成のためには、司書個人の学ぶ意欲はもちろんのこと、図書館が大学の公開講座や聴講制度の利用を専門研修の一環として認めるなど組織として専門職を育成する仕組みが重要である(毛利、pp.154-155)。

 また、利用者ニーズを把握して主題別組織の効果を高めるためには、マーケティングが重要である。営利企業と異なり、図書館は中立的な立場から永続的な継承性を持つ必要があるので、今までの広報や利用者満足度調査などに終始する表面的なマーケティングではなく、潜在的なニーズを発掘することが重要で、ニーズを細分化して研究し、どの市場にそれだけの経営資源が必要かを見極めることで、各サービスの必要性の確認や新しいサービスの開発が可能になり、それが図書館の組織形態の更新にもつながっていく(小泉、pp.296-297)。

 図書館の理念である「人々に知的遺産や情報を組織的かつ永久的に提供し、各人の生活と心を豊かにし、社会の発展と幸福に貢献する」(毛利、p.47)ことを実現するため、これからの図書館は「知の拠点」としての目的を持ち、マーケティングにより目標を立て、主題別組織を中心とした戦略的な組織形態を採用し、専門職員の育成という戦術を立てていく必要があるだろう。

(2099字)

 

<参考資料>

小泉, 公乃. (2011). 「図書館経営における経営戦略論」. 『情報の科学と技術』, 61(8), 294-299. 情報科学技術協会. https://doi.org/10.18919/jkg.61.8_294

 

これからの図書館の在り方検討協力者会議. (2012年8月). 『図書館の設置及び運営上の望ましい基準の見直しについて(報告書)』. 取得日 2018年〇月〇日, http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2013/01/31/1330310.pdf

 

毛利, 和弘. (2012). 『図書館制度・経営論』. 大阪:近畿大学通信教育部.

 

文部科学省生涯学習政策局社会教育課. (2012, 12月). 『図書館の設置及び運営上の望ましい基準(平成24年文部科学省告示第172号)について』. 取得日 2018年〇月〇日, http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/001/__icsFiles/afieldfile/2013/01/31/1330295.pdf

 

【感想など】

テキストがメインなので、ほとんど皆、同じようなレポートになってしまうのではないでしょうか…