近畿大学通信で司書資格を取得した記録

近畿大学の通信課程で図書館司書資格を取得しました(2018年度)

生涯学習論 科目終末テスト(回答例)Q1~Q5

※設問の後ろのページ数は2018年度版テキストでの回答に使った参考ページです

※テスト課題は添削されていないので不正解の可能性もあります。あくまでも回答例です

※自分の勉強用にまとめただけのものなので誤字脱字あります 

 

<回答例>

Q1. ポール・ラングランの生涯教育が必要な理由について、述べてください。⇒p.5

 ラングランは、1965年のユネスコ成人教育推進国際会議において、脱学校型の新しい学習の概念を示すため、初めて「生涯教育」という言葉を用いた。学校以外の教育を、学校の教育と同じように、全体として考える必要があるという基本的理念の下、①学校へ行く前後の教育を統合的に考えること(垂直的統合)、②学校以外の社会の様々な教育的組織・機関を統合的に考えること(水平的統合)が必要とされ、「生涯教育」という言葉は、それ以前の学校中心の教育観とは一線を画すものとして、全世界に広がりを見せた。

 その背景には、社会の急速な変化が関係していた。日本では、第二次世界大戦以降、科学技術や社会のあり方自体の急速な発展に伴い、学校教育だけでは人々の生活を支えきれなくなっていた。一方、学校教育の普及していない発展途上国でも、就学による国民全体の学力向上によって国力の増強を図ることが重要視される中で、学校から学校後までカバーする「生涯教育」という考え方は、当時の時代に即した、社会に必要とされる、全世界的な「教育改革のキイ概念」であったのである。

 

Q2. 青少年の概念について述べてください。⇒p.167

 「青少年」に明確な年齢の規定はなく、時代や社会の背景によって対象年齢が変化していることから、子どもから大人へと成長する過程において社旗的に自立した個人となるために支援する必要がある対象を「青少年」ととらえることが現実的であると考えられる。

 例えば、社会教育法制定当時の1951年の文部省の『社会教育の理論と方法技術』によると、青少年は20歳未満を想定していた。1971年の社会教育審議会答申では、少年が小学校・中学校に就学する年齢層で、青年は義務教育終了後からおよそ25歳未満の者と言われている。2009年の『子ども・若者白書』では、青少年は0歳から29歳未満となっている。

 このように、時代とともに、青少年の年齢が上がってきているが、これは、教育のみならず、医療福祉雇用などの分野でも青少年に対する行政施策全般の課題が広がっているからであり、今日的なひきこもり問題などを考えると、30歳を超えても青少年施策として講じていく必要すらあるだろう。

 

 

Q3.青少年教育と青少年教育施設について述べてください。⇒p.168

 戦後まもなくの高校進学率が50%程度であった時代には、青少年教育は学校教育・学校外教育を通じた概念であったが、その後高等学校への進学率が高まると、在学者の教育は学校が中心として担うことになり、学校外教育の分野が青少年教育として扱われるようになった。その後、高校進学率のさらなる上昇や、自然破壊など青少年の心身の健全な成長に関わる問題が発生するにつれて、学校が担う分野が拡大し、青少年教育は学校教育を補完するという立場になっていった。青少年教育は、学校とともに家庭や社会の教育的機能の充実を図り社旗教育としての役割に変化が求められるようになっていったのである。

 それは、教育とは職業生活の準備として行うものであるという概念から、1965年のユネスコの会議でラングランが提言した「生涯学習」の理念により、教育は人生のあらゆる段階において常に行われるもので、生涯において学習できる能力や態度を身に着けることが重要な要素となったからである。

 日本では、青少年教育は、青少年教育施設とともにある。図書館など他の社会教育施設と比較して、青少年教育施設の特徴は、①自然環境が豊かで広大な敷地を有していること、②非宿泊型を除いて、どの施設も宿泊室を有することで、家庭や学校を離れて自然の中で集団生活を送ることによって青少年の心身の成長につながることが期待されていた。

 文部省は、1958年度から宿泊訓練等のため地方公共団体が設置する「青年の家」の整備に対する国庫補助を行い、1997年まで続いた。1970年からは、文部省は少年自然の家の建設費補助も開始し、自然を通じた活動の成果が評価され、学校教育と社会教育との連携を深める具体的な場として整備されていった。

 現在、青少年教育施設の指導系職員は学校教員の派遣・出向が多く、教員としての経験を生かせる一方で、専門職員としてのノウハウが蓄積されにくいといったデメリットもある。また、職員以外にも大学生など多くの若者がボランティアや授業の一環として活動しており、参加する青少年と年齢が近いことから打ち解けやすいメリットがある一方で、卒業すると活動機会がなくなることから、ノウハウが蓄積されにくいというデメリットがある。また、近年では指定管理者制度により民間委託された青少年教育施設も40%近くに上っており、効率的な管理運営による予算の有効活用が可能になる一方、人件費削減による職員の質や安全性の低下が懸念されている。

 また、近年の政府における無駄の排除等の観点から、青少年教育施設にも国の厳しい財政状況の中、施設の機能や役割について新しい視点で抜本的な改革を行うよう求められており、こうした要請にどうこたえていくかが今後の課題となっている。

 体験活動は人間形成や学力向上についても教育的効果が高い一方で、現在の青少年の自然体験は減少傾向にあり、社会教育施設は、体験活動の効果についてさらなる研究を重ね、その重要性について広報誌、社会全体で体験活動に取り組む環境を醸成していく必要があるだろう。

 

 

Q4.さまざまな集団学習の展開について述べなさい。⇒p.89、p.93

 生涯学習の方法は、一人で行う個人学習と、複数の人々で行う集合学習があり、集団学習の方法は、①集会学習(講演会など)と、②集団学習(講座、サークルなど)に分けられる。集会学習は集会が終わると個々の学習者が散開して集団としての継続性に欠ける一方、集団学習は、学習者同士が相互に高めあうメリットをより生かせる。

 集団学習は、時代によって形態も異なる。共同学習・サークル活動が盛んであった1950年代には、共同学習者が自らの生活課題を見つめなおし、本音で集団で話し合うことが重要視されていた。近年では、2005年から始まった「国連持続可能な開発のための教育の10年」の取り組みの中で展開されている協働学習を基本とする社会構築主義的集団学習などがある。

 集団学習においては、「集団」の在り方が問題になる。近年、国際化、情報化、都市化が進む社会では集団の在り方が過去とは異なる。日本でも欧米でも、地域における人間関係の希薄化や、集団への所属意識の低下が、町内会やPTAなど伝統的集団活動への積極的参加を減少させ、地域集団の様相を変化させている。他者との関係が比較的密でない集会などは減少していない一方、相互の密な関係が求められる集団は、地域において少なくなっているのである。

 一方で、インターネット上のソーシャルメディアなどを通じて形成されるグループが増加している。このようなグループは国境すら超えて形成されるので、地理的制約はほぼなく、メンバー一人一人の参加度合いもさまざまで、構成メンバーも流動的である。2011年の東日本大震災に起因する様々な問題への対応については、こういったグループが問題解決に向けた情報の提供や活用によって、これまでの集団ではできなかった力を発揮した。近年ではさらに、SNSを通じたグループ形成や、グループを超えた一般社会への情報発信が盛んになっており、こう言ったグループは、国際化と情報化が進むほど、より促進されていくが、それに伴う情報格差などのデメリットへの対応も考える必要がある。

 また、学習集団が継続していくためには、公的立場から活動にかかわる行政や専門職員をまとめ役や助言者としておくことも必要だろう。

 

 

Q5.個人学習と集団学習の相違について、比較して論じてください。⇒p.89、p.91

 生涯学習の方法は、一人で行う個人学習と、複数の人々で行う集合学習がある。個人学習の方法は、①読書、②メディア利用、③習い事、④通信教育、⑤観劇・鑑賞、⑥個人スポーツなどがある。

 また、近年は社会の情報化によってeラーニングが盛んになっており、①いつでもどこでも学習に取り組め、その成果が適切に評価されること、②団体に依存しない自立した個人の学習環境を整えて社会の形成への主体的参画を促進すること、が期待されている。

 個人学習は、「自己教育・自己学習」としてとらえられ、学習する内容・方法・機会を学習者自身が選択し、自主的に学習を進める自己決定型学習が重要だとされてきた。

 一方、集団学習の方法は、①集会学習(講演会など)と、②集団学習(講座、サークルなど)に分けられる。集会学習は集会が終わると個々の学習者が散開して集団としての継続性に欠ける一方、集団学習は、学習者同士が相互に高めあうメリットをより生かせる。かつては地域の繋がりが中心であった集団学習は、近年、情報化・国際化が進む中で、インターネットの発達により、国境すら超えた集団を形成し、活動するようになっている。また、学習集団が継続していくためには、公的立場から活動にかかわる行政や専門職員をまとめ役や助言者としておくことも必要だろう。

 個人学習と集団学習とは別々に取り組まれる場合が多いが、個人学習と集団学習は相互に補完しあい、高めあう関係が少なくないため、今日の生涯学習支援においては、両者が補完関係になる流れを支援することが求められている。