情報サービス論 レポート
<設題>
学校図書館の利用教育の指導内容を挙げ、それぞれについて述べるとともに、「図書館利用教育ガイドライン-学校図書館(高等学校)」を参照(日本図書館協会ホームページの「委員会」の利用教育委員会にて全文公開。冊子は「参考書の紹介」参照)し、利用教育の手段はどうあるべきか、貴方自身の考え方を含め、論じてください。
<回答>
現代は生涯学習時代であり、また情報化社会でもあるため、文献調査法を習得することが必須である。そのために、図書館の使い方から文献の調査・活用方法まで、集団への指導を通じて学べるようにすることが、図書館における「利用教育」または「利用指導」である。
1.学校図書館の利用教育の指導内容
学校図書館の利用指導内容には、1983年に文部科学省が刊行した「小学校・中学校における学校図書館の利用と指導」において、以下の4つが挙げられている(毛利、p.74)。
(1)図書館及びその資料の利用に関する事項
(2)情報・資料の検索と利用に関する事項
(3)情報・資料の収集・組織と蓄積に関する事項
(4)生活の充実に関する事項
また、全国図書館協議会は、1982年に「学校図書館の利用指導」を発表してから改定を重ね、2004年には、「情報・メディアを活用する学び方の指導体系表」を公表した(毛利、p.75)。
2.図書館利用教育ガイドライン
『図書館利用教育ガイドライン―学校図書館』は、「学校の図書館が情報教育への取り組みを実施する際の指針を提示」(日本図書館協会、p.22)するもので、学校の目的や利用者のニーズに合わせて、以下の5つのステップに分けられている(日本図書館協会、p.24)。
(1)印象付け:学校図書館を、情報ニーズを満たす場として認識させる。
(2)サービス案内:支援の存在を知らせ、図書館を活用できるようにする。
(3)情報探索法指導:情報の探索、利用方法を指導し、主体的な情報利用を可能にする。
(4)情報整理法指導:メディアの特性に応じた情報の抽出・加工・整理・保存方法を理解させる。
(5)情報表現法指導:メディアの特性や目的に応じた情報の生産・伝達方法と、情報倫理について理解させる。
それぞれのステップに、授業との関連のあり・なし、または統合の3段階の設定や、予算措置、担当者の育成、施設・設備等の提供をすることで、具体的に目標を達成する方法を設定する(日本図書館協会、p.25)。
3.利用教育の手段のあるべき姿
学校図書館での利用教育は、生涯学習時代における初期教育の重要性から、児童・生徒にとって欠かすことのできない指導であると同時に、彼らを直接指導する立場にある教員に対しても利用教育を提供することによって、相乗効果が見込まれる。
学校図書館は、設置が義務化されていることから、子どもが最初に出会う「図書館」である可能性もある。そのため、学校図書館で充実した利用教育を提供することは、生涯にわたって他の種類の図書館を活用する基礎ともなりうるという意味で、大変重要である(山口、p.34)。
また、子どもに対して利用教育を実施するためには、教員への指導も欠かせない。学校図書館における情報サービスは、学校の教育課程と密接に結びついている(山口、p.37)。実際に「総合的な学習の時間」の学習指導要領は、学校図書館を読書・学習・情報センターとして重要な存在と位置付けており、学校図書館が「①課題の設定、②情報の収集、③整理・分析、④まとめ・表現、の探求の過程」に深くかかわることが求められている(山口、p.35)。
しかし、教員がそのことをきちんと理解し、学校図書館を効果的に活用しているとは言い難いのが実情である(菅原、p.107)。児童・生徒への利用教育を促進するためには、教員に、教育課程における図書館利用教育の重要性を実際に感じてもらうことが必要である。教育課程と利用教育とを効果的に結びつけるため、東京学芸大学附属小金井小学校では、総合的な学習の時間と国語のカリキュラムとを連動させ、教員と司書が連携して、図鑑の目次や索引についての学習を提供した。その結果、教員からは、司書が提供する資料の質や量に対する満足はもちろんのこと、児童の調査スキルの向上に対する好意的な評価が見られた(菅原、p.111)。
また、同時に、教員に対して利用教育を提供することで、学校図書館が一層効果的に授業に活用されるようになる。米国アーラム・カレッジの図書館では、学生の図書館利用を促進し、教員自身の情報リテラシーを向上させることを目的として、新任教員のオリエンテーションに図書館案内を盛り込み、オンラインデータベース等の講習会を開くなど、教員に対する利用教育を実施することによって、図書館の学習・教育支援機能について教員への理解を促している(長澤、p.234)。この事例は大学図書館ではあるが、このような利用教育を小・中・高当学校の教員に対して提供することにより、同様の効果を得られることが期待できるだろう。
このように、学校図書館の利用教育は、授業と関連付けながら、教員と連携し、また児童・生徒のみならず教員にも提供することで、相互に補完しあいながら、より効果的に学校図書館の活用と発展を図る手段となりうる。
(2019文字)
<参考資料>
菅原, 春雄、中山, 美由紀.(2007).『学校教育における情報リテラシー育成の必要性:東京学芸大学附属小金井小学校の図書館利用教育の実践例』. 教育学部紀要, 41巻, 107-115, 文教大学. http://id.nii.ac.jp/1351/00000161/
長澤, 多代. (2015). 『大学教育における教員と図書館員の連携を促す教員に対する直接的な支援:アーラム・カレッジのケース・スタディをもとに』. 図書館界, 67(4), 228-243, 日本図書館研究会. https://doi.org/10.20628/toshokankai.67.4_228
日本図書館協会. (2001). 『図書館利用教育ガイドライン合冊版-図書館における情報リテラシー支援サービスのために』. 東京:日本図書館協会.
毛利, 和弘. (2012). 『情報サービス論』. 大阪:近畿大学通信教育部.
山口, 真也、千, 錫烈、望月, 道浩. (2018). 『情報サービス論―情報と人びとをつなぐ図書館員の専門性』. 京都:ミネルヴァ書房.
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【感想など】
講評は概ね好評(ギャグじゃない)、ですが「テキストは巻末の参考文献に含めないで下さい」とのこと。